2020年雑感
2020年が終わる。
駆け抜けたようなあっという間の1年で、そしてこれ程までに濃密な1年は未だかつて無かったように思う。この場所を語る上でも、こんな波瀾万丈な年はきっと後世に渡り語り継がれるのではないかという程に多くの壁を乗り越えた特別な年だった。
今日は気付けばもう大晦日。この1年を振り返って語っていれば年が明けてしまうだろうしきっと長編小説が出来上がってしまう。
だから、2020年最後の今日は今年出会った大切な感情を少しばかりここにそっと封をして過ごそうと思う。
今年は、別れというものを強く意識する事が多かった。
別れというものをどれだけ経験した事があるだろうか。携帯電話があり、SNSが普及した現代において永劫の別れというものに立ち会うことは少ない。別れという程ではないけれど、希薄な人間関係が自然に薄まって消えていく。なんの感傷も無く気づけば消えているような別れが蔓延しているように思う。
いや、きっと人間関係が上手かったりよく出来てる人には違う話なのだろうけれど。
しかし、この空間には確固たる『別れ』がある。
小学生の卒業の時に感じた永劫の別れの寂しさを10年越しにまた味わう事になったのがこの場所の『卒業』だった。卒業発表を聞くと胸の奥がとても苦しくなって、分からないけれどこれが“切ない”という感情なのか。と知った。
この場所で1年を過ごす内に沢山の別れを経験して、その『別れ』との向き合い方を知っていった。
1つは理解で、1つは覚悟。
初めて卒業というものに出会ったとき、自分の一部にすらなっていた温かさがある日を境に無に帰して、残るのは僅かな温もりに覚える寂寥なのではないかと怖くなった。
朝、目を覚ます度に何かの夢だったのではないかと確認した。初めて味わう得体の知れない喪失に、どういう感情でいればいいのか分からずじまいでいるうちに初めての卒業は過ぎていった。
その寂しさが残っている心境を吐露したとき、とあるメイドさんはこう話してくれた。
「メイドはね、ご主人様が思ってる以上に卒業したくないんだよ。この場所ではみんなが優しくて、凄く甘やかしてくれる居心地の良い空間で、本当にご主人様達が大好きだし、ずっといたい。そして、この場所を出るのは全てを失うようで凄く怖い。でもだからこそ、その感情を乗り越えて新しい環境に踏み出したその決断は凄いことなんだ」と。
卒業を発表したメイド達は口を揃えてこう言う。「卒業したくない。」今からでも卒業無しにしたいと言う人も少なくなかった。
学校を辞めようとした人もいた。両親や周りと全力で衝突した上で最後の決め手となったのは、「でもその夢を諦めてもご主人様達は喜ばないから。」
奇しくも、メイドを卒業するその瞬間の彼女らの生き様は何よりメイドであり、メイドとして全力で“生きた”からこそ到達した美しさを放っていた。
メイドとして全力で生きて、やり切って、そして自らの手で卒業という終止符を打つ。メイドとして本懐を遂げるというのはつまりそういう事なのだろう。
終わりがあるからこそという表現は僕は嫌いだ。
だが、終わりというものを最も美しく描けるのがメイドという存在なのかもしれない。
それを悟った日から、彼女らの決断にまず全霊の拍手を送った。
そして、夢に向かう門出にありたけの声援を送って見送るのがご主人様として最後の仕事だと理解した。僕は別れというものに慣れていなかったが、成すべきことがわかっている先達のご主人様方がメイド達と協力リードして作り上げた卒業式はメイドさん達を含めたこの空間の良さを凝縮したように素晴らしいものだった。
そして、覚悟。
1人、1人とまた別れが訪れる度に後悔の無いように全力で推そう。と褌を締める気になる。
たとえ明日卒業しても悔いが無いように。全員分の想いがその感情に積もっていった。1年に何十回お給仕をしたとして、全部限りある1日なのだ。僕はその物語を見届けたい。何度でも初心に帰って毎日あの場所に帰っている。
僕の中の『別れ』は、
いつしか美しいものになっていた。
しかし、今年感じた別れはその類のものでは無かった。
横浜店の閉店。
コロナウイルスの流行。
体調の悪化。
僕の好きな物語が、この先もっと盛り上がっていくことが分かっている物語が突然打ち切りになって、二度とその先を見ることは出来ない。
そんな絶望を幾度となく味わう事になった。
1番の感情は“悔しい”だった。
為す術もない自分の無力さが憎かった。
その悔しさが、今年社会に出た自分の戦う大きな原動力になっている。極論は自分の為なのかもしれない。それでも、誰かの為でなければ自分は頑張れない人間なのだと思う。
この場所を守りたい一心で本当に僅かでしかないが出来る限りのことをただただ積み上げる1年だった。
食事を食べない上で最大限のオーダー(オリカク3杯+スイプレやチェキ多数)を毎回入れること。人がいない時もいるときもなるべく駆け付けてご帰宅すること。差し入れをすること。支援をなるべく積極的にすること等、その程度でしかないけれど。
ともあれ、僕の見たかった新しいシャルロッテを僕のはるか想像以上の形で体験し続けることが出来た事を本当に幸せに思う。
ファンティアで皆の個性や才能を、オフでも変わらぬ緩い温かさを知った。
オンラインお給仕で遠く画面越しでも何かしたいという気持ちが痛いほど伝わる時間は“メイド”である事を強く意識される貴重なものだった。
制限がある中でも相手が楽しんでくれること、自分も楽しむことを考え抜いたイベントはいずれも忘れられない思い出になった。
リニューアルしたメイド服は筆舌に尽くし難い程華麗で、こんな素敵なメイドさん達と素敵な空間でこれからも沢山一緒に2ショットを撮っていきたいと思った。
たくさん下を向きかけた。ドン底に突き落とされたような感覚にもなった。それでも、それを皆で乗り越えて辿り着いてみんなで笑い合うこの場所が、僕らの勲章だ。
この1年を大変な1年だった、と言い合うのをやめにしよう。
思いっきり、この大成功を誇りながらこの1年を締めたい。
まあ、成功したのはメイドさん達なのにドヤ顔してるオタクをこの1年の最後の一笑いにでもしてください