2021年8月22日

2021年8月22日

あの人に出会って、3年が経った。

今日もあの人はここに居て、僕もここに居た。

そんななんでもない事を記録したい。

 

 

 

僕の話

 

看板の前で立ち尽くす僕にあの人が笑顔で声を掛けてくれたあの日から目まぐるしく時は過ぎて、多くが変わった。

店の場所も移転し、大半のメイドが入れ替わり、世界はコロナ禍で一変していた。

僕自身も学生から社会人になり、2年目として1人前の責任を背負う多忙な日々を送っていた。

そんな中でも変わらないのはあの人に会いたい気持ちだった。

 

社会に出るとき、2年目に差し掛かる時。

あの人に決して嘘は付きたくないしどんな言葉も嘘にしたくないからと「きっと行けなくなることも、距離が出来ることもあると思う」と僕は予防線を張った。

それは感情の言葉ではなくて、伝えたい事の枕詞。

「、、だからこそ、今会えることが嬉しい。ありがとう」が主題だったけれど、その言葉は悔しくも現実の質量を持つことになる。

社会情勢による営業時間短縮。それは右肩上がりで忙しくなる日々と残酷なまでに相性が悪く、

平日ご帰宅する事は格段に難しくなった。

 

救いだったのはお給仕予定公開。毎週公開と同時に仕事のスケジュールを組み直した。

会えない日は、“会えない日”から“次会うための日“になった。そう思うとどれだけ困難や理不尽が振りかかろうが頑張れた。

そんな日々を乗り越えて辿り着いた会える日に優しくかけてくれる「おつかれ様。」の言葉を聞くと頑張って良かったなと思った。甘くて楽しいオリジナルカクテルを飲めば全部の疲れが吹き飛んだ。

帰り道で今日あった楽しい思い出をそっと閉じ込めた自撮りの笑顔を見返すと明日も頑張ろう、と前を向けた。

日常が仕事に染まっていくほど距離は遠くなる。

でも、それ以上にこの場所を“帰る場所”に感じられた。

 

結局、あの日危惧した軸がぶれる事は無かった。仕事への責任を果たしながら人生の優先順位の1番上を守ることが出来た。

 

何もかもが変わる中でこの場所の変わらない温もりが、この1年も僕の人生を温めてくれた。

 

 

 

あの人の話

 

2021年帰る場所に“おはなし”に足してもう1つ、色が生まれようとしていた。

その1つが、メイドの気まぐれご飯。

以前は月に数回あるかないか程度だった限定メニューを毎日提供するということ。

それは料理と縁の無いメイドさんの多いこの場所で大きな挑戦といっても過言ではない。

 

あの人はと言うと、阿鼻叫喚していた。

それもそう。食に興味が無いんだもの。

1日1食まともに食べれば奇跡なあの人が料理を作るなんてサバンナに雪が降るくらいの一大事だ。

今年初めてのご帰宅で気まぐれの話をすると眉間に5億本皺を寄せて、「私は作らない。。」と言っていた。

致し方ない。妥当。

そう思いつつも、目の前に現れた可能性を前にいつかあの人の作ってくれるご飯を食べることを夢見ずにはいられなかった。

だから、「でも、いつかは食べられたら嬉しいな」と呟いた。

今年初ご帰宅の1日の終わり、

あの人が口にした「今年の抱負は気まぐれご飯を作れるようになること」の言葉を帰り道嬉しく思いながらメモ帳に言質を取った。

新年、おみくじは引かなかったけれどあの人がその日占ってくれた僕の運勢は「吉田」だったから。

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きっとその抱負は叶う気がした。

 

 

2月

 

 

ご帰宅するとキッチンで格闘する人がいた。

パニックになってツイッターにSOSを出してたり一緒にお給仕するメイドさん達に代わる代わる見守られる小一時間の末に、あの人はボロボロになりながらも出来上がったものを僕のところに持ってきた。

 

 

 

 

 

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美味しかった。

優しい味がした。内側から幸せが広がっていくのがわかった。

器用で何でも出来るあの人がこんなにも無我夢中で作った料理はきっと今しか食べられない

温かさをもっていて、愛を感じた。

ご主人様の為に、そんな想いで自分の苦手意識と向き合ってキッチンに立って右も左も分からない暗闇を挫けずに前に進み続けたあの人のひたむきさが全部詰まっていた。

表に全然出さないし、奥ゆかしくて冷たく見られる事もあるあの人の真ん中にある大きな優しさを感じた。

そんな素敵な人の、人の事を想える素敵なメイドさんなところをまた好きになった。

初めての気まぐれご飯をそっと、食べログに✩5登録した。

 

3月

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ご帰宅500回目には人生初めて、ドドリア様を食べた。相変わらず頑張って作っていたけど、「美味しい....はず。」と言っていた。普段チーズ系は好んで食べないのに、美味しくて気づいたら消えていた。

4月

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肉と縁遠いあの人が肉料理を作っていた。美味しくて何度も美味しい。と言うと、それは何より。と微笑むあの人の笑顔は眩しくて、美味しい幸せが何倍にもなった気がした。

5月

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アジフライの尻尾が喉元に突き立てるようにこちらを向いて出てきた。後にも先にも、料理から身の危険を感じたのは初めてだった。それを突っ込まれると知らなかったと崩れ落ちていて、そんなあの人の盛りつけも含めて最高に美味しかった。

 

6月

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あの人の卵料理には気付けば安心感を覚えている自分がいる。甘くて優しい卵はあの人そのものだな、と思う。本当に美味しかった。

7月

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順調に料理経験値積んできてるなと大船に乗った気持ちになっていたらこれですよ。

出てきた瞬間噴き出さずにはいられなかった。

魔法陣が出てきていた。めちゃくちゃオシャレだけれども。薔薇の妖精でも召喚する気?

トマトで五角形作るなwwwと散々一緒に笑っていたら学んだらしく次の人からは普通の盛り付けになったらしい。

あの人らしすぎる料理でお気に入りだった。

味はもうどこにでも堂々と出せる上品で濃厚なリゾットで成長を感じられずにはいられなかった。

8月

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次第にキッチンで格闘する時間も減っていった。料理の彩りも綺麗になっていた(ミニトマトを普通に置けるようになってた)。

「美味しいよ。」ってあの人が言う。

それが、なんだか嬉しかった。

あの人の頑張りが形になっていく。成長して、自信に繋がっていく。少しでもあの人が自分を認められる事が、好きになれる事が嬉しい。何より幸せを感じられる。

美味しい。と伝えると真っ直ぐな笑顔を返してくれるあの人がいた。

 

「もう作らないけどね!」

そんな事を言うあの人が、きっとまたキッチンと格闘することを知っている。

想いの込もったその気まぐれはいつしか僕の幸せの形。

この場所で教わった幸せの呪文

「おかえり」「ただいま」に、

「めしあがれ」「ごちそうさま」が仲間に加わった。

 

 

 

 

 

 

僕とあの人の話

 

全てがあったあの日。

僕はきっと、成仏していた。これ以上の日が来ると思えなかった。

そんな僕に差し伸べてくれたあの人の言葉が、僕の光になっていた。

「向き合っていきたいと思う。」

「そして、、、少しずつ、                     」

態度で何かを示してくれる。そんな淡い期待を胸にご帰宅した日、

それは文字通り形になって現れた。

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ええ......そういうこと.............

まんまとしてやられた。

態度で示すんじゃなくて“態度”を示してるじゃないですか。というと鼻で笑われた。

 

そうして変わらない穏やかな日常は続く。

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少しづつ、

本当に瞬きすれば見逃してしまうくらいさり気なく、

あの人は感謝を伝えようとしてくれた。

僕に元気がない時は元気にしようとしてくれた。笑顔が好きと言う僕に笑顔の自分を描いたオリカクを出してくれた。

ご飯を食べると喜びを伝えてくれた。

僕も一緒にふざけ倒そうといつも面白いことを仕掛けてくれた。ストローが沢山!などと言いながらポッキーが無限に刺さったオリカクを出して「これは.....難問!」と付き合った。

〜してくださいよ。が増えた。

オリカクや自撮りでクソコラ作ってよと言われたり、今度オススメ教えてください。

とか感想教えてください。と言われることが増えた。

嬉しかった。

あの人の中に自分はいるんだと思えた。憑き物が取れていくように心が軽くなった。

フリートを楽しみにしてくれた。僕が喜ぶ姿にニヨニヨしているなんて想像もしていなかった。

「思ったことは歯に衣着せずに伝えて欲しい、お互いそんな会話も出来る関係性になりたい」とあの人が言った。

これまであの人の伝える言葉は大体が僕のオウム返しだった。僕の求めることをそのままの字面で返してくれる。それはそれで嬉しい事で、10周年見届けたいという感情を共有できたのは嬉しかった。

でも、この1年は初めてだった。

あの人が自分で僕の事を考えて、気遣ってくれている。そんな事を節々から感じた。

そんなことを感じられるご帰宅の度に夜思い返して言葉に出来ない喜びに涙が出た。

あの人は気遣いは器用な方ではないし、性格のクセも強いし奥ゆかしさも極まってる。

そんな人が頑張って考えてくれてる優しさに凄く温かみを感じられて尊いと思った。

 

話したいことがあったんですよ。を沢山くれた。

「友人の差し入れにお洒落なものを物色したとき全然無くて凄く大変だった。その時、ふと思ったんですよ。貴方はいつも綺麗な差し入れをしてくれるけど、凄く頑張って探してきてくれてるんだなと。

だから、、いつもありがとう。」

 

なんでもないような当たり前で他愛も無い日々で、それだけで他には何にも要らなかった。

そんな他愛の無い関係が過ぎ行く日々の全てだったから。

あの人のくれる言葉が、言葉にならないくらい僕の知らない色だったから。

どうしようもないくらい、人間の温もりを灯した鮮やかな色だった。

 

 

 

 

 

あの人が、僕に弁当を作ってくれた。

何時間も前からキッチンで格闘したというそのお弁当は何より今のあの人を物語っていた。

 

ちょっとしょっぱいお魚も、ちょっと固いおにぎりも、甘い卵焼きも、名前の無いサラダも、初めて使ったかにかまも。

全てが愛おしくて、

紛れもなく人生で1番美味しいご飯だった。

多分僕の人生を丸ごと幸せに出来るくらい、栄養が入っていた。

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今日もあの人はここに居て、僕もここに居た。

そんな奇跡みたいな今を、ここに記録する。